裁判員体験記その3

 さてさて火水木と公判→評議と繰り返して最終日の金曜。まずは論告・最終弁論ということで、検察が求刑を行い、弁護人側も量刑に関する主張を述べます。この量刑ですが、まず現住建造物放火は5年〜死刑と決まっています。一方、執行猶予or保護観察*1というのは3年以下の刑に対してのみつけることが可能なので、今回の罪状ではそのままでは執行猶予等は関係ないものということになります。が、一方で情状酌量という特殊システムが存在し、これがジャッジに認定されると刑が半分になり(死刑は無期に)、それによって刑が3年以下になった場合も執行猶予or保護観察をつけることが可能になります。
 というわけで今回の罪状が認定された場合に一番軽い刑は懲役2年6か月の執行猶予ということになりますが、それに対して検察は執行猶予なしの実刑3年、弁護人は執行猶予付きの懲役2年6か月という主張をします。で最後に被告人が改めて事件に対する反省の弁および刑期を終えてシャバに出てからの*2社会復帰についての意思表明をして最終弁論が終了します。これに対してまた評議室で評議を行うわけですが、この量刑に関する最終的な議論はさすがに裁判員と裁判官のみが行い補充裁判員の僕はそれを眺めている形になります。
 さて議論がまとまって実際に判決文を書くのは裁判官の仕事ということで最終日はこの間の時間が結構あり、その時に他の裁判の傍聴の案内を係の人にしてもらいました。この日の判決の目玉(?)は木更津女子大生強姦殺人事件で、このため結構なマスコミがこの日は来ていたんですが、残念ながらこちらの判決は自分たちの事件と全く同じ時間にやるので傍聴には行けず、その他の2つの事件(「青年の被告が親友を乗せたバイクで事故を起こし親友死亡」&万引きおばちゃん)の傍聴へ。万引きおばちゃんほうはなかなか面白く、最初の2回は執行猶予もらったのに再犯を繰り返しまくり、今回の場合は千葉のコープでジャガイモ(200円)を盗んで実刑(確か3年)というのがなんとも。窃盗って再犯を繰り返すと量刑の判断が厳しくなるだけじゃなく、そもそも常習累犯窃盗という別の罪状になって基本の刑がランクアップするらしい。万引きは犯罪です!
 というわけで待ち時間も有意義に過ごし、判決文の細かい文言について細かく議論をした後にいよいよ判決へ。といっても、法廷での手続きのうち判決宣告だけは補充裁判員は参加できず、判決は傍聴席側で聞くことになります。ただ同じ裁判を裁判官側からと傍聴席側からの両方から見られるというのは補充裁判員だけということになるのでむしろ貴重な体験。裁判では裁判官&裁判員は一番最後に入廷するので既に被告人がスタンバイしているわけですが、傍聴席から見ているとまず被告人が手錠をかけられた状態で入廷し、裁判官が来る前に手錠を外すという一連の流れを見ることができます。判決のほうは懲役3年・保護観察5年ということで、実刑がつかない範囲では一番重い刑ということに。前述の万引きおばちゃんが手錠をかけて入廷して判決後に再び手錠をかけられて退廷していったのに対し、こちらは手錠をかけて入廷して終了後は手錠なしで退廷していったというのがなかなか象徴的でした。

次回雑感を書いて最後にします。

*1:「執行猶予をもらってから最初の再犯で再び執行猶予をもらえるけど、保護観察の場合は再犯即実刑、また保護観察は定期的に保護観察官に報告にいかなければいけない」とか基本的に保護観察のほうがペナルティとしては結構大きい

*2:本当に被告人が「シャバ」と言っていた