物工のHを誘ってベクミル柏店で放射能測定をしてきました。「流山の野菜の汚染度を知りたい」とかそういう純粋な動機は薄くて、せっかく本場(?)のホットスポットである柏・流山に住んでるんだし勉強しときたい→勉強するなら実際に手を動かして物理実験するのがイチバン、という話ですね。とりあえずガイガーカウンターとシンチレーションカウンターと半導体検出器の原理と概要をざっくりと予習してから店舗へ。
ベクミルで使ったのはNaIシンチレーションカウンタのLB200(980円/1検体)。本当ならスペクトルが見られるLB2045が使いたいけど3980円はちと勉強料には高い。試料には大家さんの畑の白菜と土をそれぞれ500ml程度ずつ用意。白菜は流山市ウェブサイトの情報とかを見るに十中八九不検出でそれだけだと面白くないということで、ほぼ間違いなくそれなりの値を叩き出してくれるという理由で土をチョイスしました。
まずは土にガイガーカウンター当てて簡易測定。0.10μSv/h でした。初回利用時のざっくりした説明を受けた後に土と白菜(みじん切り)を500ml容器に詰めて測定開始。試料は白菜が354gで土が439gだった模様。
- Bq/Lの値の点推定値と誤差が表示される仕様。
- 誤差のほうは最初40Bq/Lとかだったのが段々減ってくる。が、誤差が単に確率的なものだとしたら測定時間が4倍になったら誤差は半分になるはずだけど、しばらく経ったあとは25Bq/Lあたりでどんどん誤差の減少スピードが減衰していく。どうも15Bq/Lくらいのところに下駄をはかせてあるような気がする。これがこの測定器に見込まれる系統誤差ってことかな。
- 最終的な表示は白菜が0±18Bq/L(いわゆる不検出)、土が700±25Bq/L という結果で、これを重量当たりに換算して補正係数0.6を掛けると
白菜:0±25Bq/kg
土:478±29Bq/kg
という結果に*1。土は700Bq/kgくらい出るかとも思ったけど、まあ概ねでは予想通りの結果ですね。- 白菜の「0」っていうのが信じ難いので係の人に訊いてみたところ、「マイナスの値は0と表示されます」との答え。いや原理的にカウント数数えてるだけだからマイナスってそもそも有り得ないはずだけど、と話をしてもイマイチ要領を得ず。どうやら後で調べてみたところ、「マイナス値」というのは事前に測定したバックグラウンドを引いた後の話らしい。あーいちおう鉛で囲ってあるけどアレじゃ十分な遮蔽にはなってないということか。ていうか「結果の解釈は客に任せる」っていうベクミルのスタンスは至極真っ当だけど、内部設定は教えてくれないとそもそも解釈ができないので最低限の説明は欲しいな。ベクミル内で「バックグラウンド」って単語一切聞かなかった。
- 補正係数の0.6っていうのも聞いても分からなかったんだけど、どうやら「主なガンマ線源はCs137とCs134だが、カウンタは検出したガンマ線が全てCs137であると仮定して計算を行っている*2。で、Cs134はCs137より2.5倍くらい壊変がキャッチされる確率が高いので、値を減らす方向に補正する必要がある」ということらしい。
- あとカリウムが何故いろいろと面倒なのかもちゃんと理解できなかったので帰った後に再勉強。カリウムが面倒な理由は
- しかしガンマ線の検出効率はよく分からん。エネルギーが高いほど検出しやすいのかと思ったけど、K40の1460KeVへの感度はかなり低いらしい。あとベクレルの定義を考えるとカウントレートcps/(Bq/L)を使えばそのままベクレル値が計算できそうな気がするけど、実際にはキャリブレーションファクター(10^2くらい)なる値を掛けないといけないらしい*4。謎。
・・・とまあそんな感じで大変勉強になりました。やっぱり実際に手を動かすのが一番ですね。単なる統計解釈の問題なら物理屋より遥かに理解度が高い自負がありますが、やはり実際に解釈するとなると統計以外に知っていないといけない物理方面の事情がいろいろあることがよく分かりました。