ギャンブルと数学補足

前回分はこちら
前回の説明はいろんな人になんとなく意味を掴んでもらうように書いたので逆に数学的な意味がちょっと分かりにくくなったので補足。
まずは

>実は「現在の所持金のうち毎回x割を賭ける」という戦略を決定して長時間ギャンブルを行うと、トータルで見た1回あたりの所持金の増加率は「100%の確率で」ある1つの値に定まるということが分かっています。

という部分の厳密な意味を。
これは(n回後の所持金/最初の元手)を確率変数Y_nとおいたときに
P?left{?lim_{n?rightarrow ?infty} ?frac{?log(Y_n)}{n}=?rho?right}=1
ただし
?rho=E?left{?log(1+?phi X)?right}(Xは賭けの倍率-1(すなわち利益率)を表す確率変数、?phiは賭ける金額/所持金)
というのが厳密な意味です。まあ大雑把に言えば、「十分試合数をこなした後の所持金は、それまでの運次第で「差」は結構違うかもしれないけど「増加率」で見ればほぼ確実に大体同じになる」といったところでしょうか。
ここで重要なのが?rhoの表式。これを眺めると「一定確率でX=-1となる賭け(つまり賭け金全額を失う可能性がある)なら?phi=1(つまり毎回所持金全部を賭ける)としてしまうと?log(0)が現れて期待値全体が-?inftyとなってしまう」ということ、そして「求めるべき関数が増加率のlogの形になっているため、もとの増加率の期待値が発散したとしてもこちらが発散するとは限らない(実際Aのケースでもこの値は発散しない)」ということが分かります。
さてさて最大の利益率(のlog)を実現する?rho(?phi)ですが、これは元の賭けの期待値がそれほど大きくない(すなわち「僅かに有利な」賭けである場合)、最適な?phi,?rhor=E(X)(賭けの利益率の期待値)として
?phi?simeq?frac{r}{E(X^2)},?qquad?rho?simeq?frac{r^2}{2E(X^2)}
となります。ここで賭けの期待値rが十分小さいことから、二乗の平均E(X^2)はほぼ分散V(X)と等しくなり、つまり


わずかに有利な賭けの場合、賭けるべき金額の割合は期待値rに比例して増える一方で分散に反比例して減る。すなわち同じ期待値ならランダム性が小さいほうがより多くの所持金を書けることができ、
このときの所持金の増加率のlogはrの二乗に反比例する一方で分散に反比例する、すなわち賭けの期待値が同じならランダム性が小さい賭けの方が断然有利


ということになります。