ギャンブルと数学2

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まずは定石として賭け金の倍率の期待値を計算してみます。するとAでは+∞、Bでは+1/3になります。従ってAの方が断然有利!・・・というふうに簡単には決まりません。
実際にAまたはBのギャンブルを長期間行うことを考えましょう。ここであなたは1回あたり現資産の何割を賭けますか?ここで喜んで毎回全財産を賭けるのは赤木しげるくらいのもんでしょう。実際、十分多くの回数をこなせばいつかは必ず裏が出て「ほぼ確実に」スッカラカンになってしまいますね。が、ここで「毎試合必ず全財産を賭ける」という戦略のもとでも、十分多い試合をこなした後の所持金の期待値は+∞となります(1回あたりの期待値が有限のBでも)。これは実際の感覚とはかけ離れていますね。このように、単純な期待値というものだけでギャンブルの戦略が評価できるわけではありません。
何故このように期待値と現実が乖離してしまったかといえば、ごく低確率(十分回数をこなした後では0%)でしか起こらない出来事にのみ収入源を託してしまったからといえます。しかし、結局今扱っているのは「有利な」ギャンブルですから、「確実に(確率100%で)」資産を無限に増やす方法があると考えるのが自然でしょう。ここで「100%」と言ったのは、例えば無限回コインを投げて毎回裏が出続けるというのは「起こりうる」出来事ではあるけど確率としては無視できるといった意味です。実際、直感的に考えて毎回資産の1%くらいずつチビチビ賭けていれば、効率は悪そうですが確実に資産を増やすことができそうです。

さてここで数学的手法を用いてみます。
実は「現在の所持金のうち毎回x割を賭ける」という戦略を決定して長時間ギャンブルを行うと、トータルで見た1回あたりの所持金の増加率は「100%の確率で」ある1つの値に定まるということが分かっています。つまり戦略としてxを決めれば1回あたりの所持金増加率が決まりますから、適切なxを選ぶことによって実現できる増加率が高いものが「効率よく稼げる」ギャンブルということになります。ここで実際にABについて見てみましょう。
まずBの場合ですが、こちらでは毎回所持金の1/3を賭けるのが最適な戦略となり、このとき1回あたりの増加率は5.8%となります。さらに、毎回所持金の62%以上を賭けるという戦略をとってしまうと増加率はマイナスとなり(つまり減る)、いつかは確率100%でスッカラカンになってしまいます。
一方期待値が+∞のAの場合。こちらは毎回所持金の12%を賭けるのが最適な戦略となり、このとき1回あたりの増加率は3.9%となります。さらに、毎回所持金の31%以上を賭けるという戦略をとってしまうと増加率はマイナスとなります。
従って結論としてはAの賭けのほうが「効率が悪い」ということになりますが、何故このようなことが起こるかといえば「Aは結果のランダム性が多過ぎるため期待値的に有利でも多額の資産を賭けることができないから」ということになります。実際Aのほうが毎回賭けるべき資産の割合が断然少ないですね。
この理論を応用すれば「タネ銭をいくら持ってる時にピンのフリーに行くのとマンションで高額賭けるのとどちらが効率が良いか」みたいな議論をすることが出来ます。まあ個人的にはかなり面白いトピックだと思ったんですがいかがだったでしょうか。
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